便秘の定義について
便秘には排便回数に関してとくに定義がありません。個人差が大きいので、週に何回未満なら便秘!とハッキリ決められないのです。
たとえば排便回数が週に3回未満であったり、便が固くて出にくいのであれば便秘である可能性があります。
ただし、数日間便通がなくても、何日かに1回はスルッと滑らかな便が不快感なく出ているようであれば問題ないといえます。
逆にお腹が張って気持ち悪い、お腹が痛い、排便時痛、残便感等不快な症状が伴う場合は何日排便がないかに関係なく便秘である可能性があります。
便秘の原因について
高齢者や女性は便秘に悩む人が多いです。というのも、加齢による筋力低下や、ぜん動運動の弱まり、女性ホルモンバランスの影響が関係しているためです。女性の場合、生理前や妊娠中に便秘になることが多いです。
ぜん動運動とは?
口側から肛門側へ向けて、消化管内容物を移動させる消化管の運動。消化菅の一部の筋肉の収縮によって生じます。
そのほかの原因は生活習慣に深く関わっています。例えばこんな原因があります。
- 朝食を食べない
- 食事の量が少ない
- 無理なダイエット
- 暴飲暴食
- 水分摂取不足
- 食物繊維摂取不足
- トイレを我慢するクセ
- 環境の変化
- ストレス
- 不規則な生活
- 運動不足
自分の便秘タイプを知ろう
①器質性便秘
腸管の癒着やポリープ、周辺臓器からの圧迫などなんらかの原因がもととなって便が通れなくなっている状態です。このタイプの便秘の場合、自己判断で便秘薬を服用すると危険です。(腸管に穴があく恐れがあります)
排便時の激痛、経験したことのない痛み・違和感、吐き気嘔吐が続くといった症状が伴う場合は即、病院へ!見逃してはならない命にかかわる病気が隠れている可能性があります。
②腸管が緊張しているタイプ
疲れやストレス状態が腸の動きに敏感に現れるタイプです。緊張するとお腹が痛くなったり、症状が悪化します。下痢と便秘を繰り返す場合もあります。過敏性腸症候群もこのタイプにあたります。コロコロした小さい便や固くて出にくい便、排便がないことでお腹の張りが起こります。便を出すと不快な症状が和らぎます。
このタイプの便秘を改善するためには、ストレスと上手に向き合うことが大切です。適切な睡眠と運動で、自律神経のバランスを整えましょう。
③腸管の緊張がゆるんでいるタイプ
ぜん動運動の低下や腹筋低下による排便時の腹圧低下が便秘の原因に深く関わっています。高齢者や女性に多いタイプです。
腸管のぜん動運動が低下する結果、糞便が腸内で長く存在することになります。その結果、便の水分が吸収されすぎて、固くて出にくい便になります。
このタイプの便秘を改善するためには食生活の見直しと運動習慣をつけることが特に大事です。
④直腸の神経が鈍感なタイプ
神経が鈍っていると便が直腸まで運ばれても「便を出したい」信号がでません。排便を我慢しがちな人に多いタイプです。今トイレに行くのは恥ずかしい…今トイレにいったら遅刻しちゃう…いろいろな事情で我慢して、便を出すタイミングを逃し、直腸に便がたまっていきます。それが習慣化して、排便反射が起きにくい状態になります。
このタイプの便秘を改善するためには一定の生活のリズムをつけることが大事です。生活の中に余裕をもって排便できる時間をつくり、習慣化することです。
ここでは便秘をわかりやすく4タイプにわけて考えましたが、実際は簡単に切り分けられない場合もあります。複数の原因が重なることだってあります。一度便秘になってしまうと、便秘の負のスパイラルに陥ってしまう…なんてことも。
便秘解消のためにするべきこと!
①生活リズムを整えよう
排便のリズムをつけるためにも、できる限り規則的な生活を送りましょう。
起きる時間、ご飯の時間、寝る時間を決めることによって生活に規則的なリズムがつきます。そうすると自然と排便のリズムも整っていきます。
②朝ごはんを食べる習慣をつけよう
朝ごはんを食べることによって、胃腸が活動を始めます。腸がしっかり動いてくれることで、便が運ばれます。
排便リズムが整っていけば、朝ごはんを食べたあと、自然にトイレ(大)に行きたくなります。
③便意をガマンしないこと
便意はガマンしようとすればガマンできるものです。(おしっこは我慢できませんが…)一度去ってしまった便意を蘇らせるのは難しいものです。
朝ごはんを食べて、トイレに行きたくなったらすぐにトイレに行くことが大事です。
余裕のない朝はトイレに行きたくなっても、後回しにしてしまうことありませんか?そうすると大腸で便の水分の吸収が進み、便が余計に固くなって便秘のスパイラルから抜け出せなくなります。
そうならないためにも、前日の夜は早めに眠りにつき、朝早く起きて余裕をもったスタートをきりましょう。
④水分をしっかり摂ろう
水分不足も便秘の原因の一つです。人間は食事と飲み物、体の代謝産物から生きていくのに必要な水を得ています。飲み物からの水分摂取は1.5L〜2Lが理想的です。500mlペットボトル3本〜4本分を心がけましょう。
⑤食物繊維をしっかり摂ろう
食物繊維には腸内環境を整えたり、便の量を増やして排便を促進する力があります。野菜や豆類、海藻、きのこ類には食物繊維が豊富に含まれています。1日18〜20gくらいの食物繊維をとりましょう。
⑥適度な運動の習慣をつけよう
ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を1回30分以上×週に3〜5日とりいれるといいです。運動することで腸の動きを促すだけではなく、自律神経のバランスを整えたり、睡眠の質の改善など一石何鳥にもなります。
+α 腹筋を鍛えるとよりGood
腹筋を鍛えることで便を出すための腹圧を高めることができます。ふんばって、いきむときに必要な力です。
⑦ストレスをためないこと
適度なストレスはいい刺激になりますが、過度なストレスは便秘を含め万病のもとです。その日のストレスはその日のうちに発散したいものです。
睡眠不足や過労は肉体的な疲れにつながり精神的ストレスに対応・適応する妨げになります。疲れているときは無理をせず、体をいたわりましょう。
どうしても解決しない頑固な便秘には…
固くなって出にくくなった頑固な便秘を治すのはなかなか難しいですよね。
生活習慣を改善しても便秘が解決しない場合は、市販の便秘薬や整腸剤を試してみるのもアリです。ただし、便秘薬はあくまでも一時的に。便秘薬に頼りすぎると、クセになることがあるので、必要な時だけにしましょう。
ただ、先ほど器質性便秘の話でも伝えたように、激しい腹痛や吐き気を伴うような便秘の場合は自分の判断で市販の便秘薬に手を出さないほうがいいです。病院で医師に相談しましょう。
便秘だけではなく発熱などの急性症状を伴う場合も、まずは病院へ。
また、通院・治療中の方や妊娠・授乳中の方も、まずはかかりつけの医師や薬剤師へ相談しましょう。
市販の便秘薬にはいろいろな種類があります。いくつか紹介するので便秘薬を選ぶときの参考にしてください。
◆便秘解消したいけど、お腹が痛くなるのはイヤ!な人向け
取り入れやすさ★★★★★ 効果★★★ 副作用の少なさ★★★★★
有効成分として、酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムだけが含まれている便秘薬がおすすめ。
マグネシウム製剤は一番安全性が高くてクセになりにくいです。マイルドな効き目で、大腸刺激性が少ないので腹痛が起こるのが嫌な人に向いています。腸管の水分量を増やすことで便を柔らかくし、出しやすくする作用があります。薬の効果が現れるまでの時間は個人差が大きく、明確には言えません。
お腹が痛くなりやすい腸管が過敏なタイプの便秘にもおすすめできます。
◆とにかく速攻で便を出したい!人向け
取り入れやすさ★ 効果★★★★★ 副作用の少なさ★★
浣腸がもっとも即効性があります。(効果が出るまでに3分から10分程度)早い人は1分もしないうちに便意を感じますが、早く出しすぎると浣腸液だけが出てきて、肝心のウンチが出てこないので、便意との戦いとなります。間違った使い方をすると腸管を傷つける恐れがあるため、初めての使用はハードルが高いかも…。でも、正しく使えば一番手っ取り早く便を出せます。
坐薬は浣腸の次に即効性があります。(効果が出るまでに10分〜30分程度)浣腸よりは手軽に使用できますが、どうしても飲み薬の手軽さには劣りますね。直腸に便が溜まっているタイプの人には効果てきめんです。
連用するとクセになって、薬が手放せなくなってしまうので、使用は週に2回までにとどめておいたほうがいいでしょう。
◆腸管を動かして溜まっているものをスッキリさせたい!腸の動きが悪い人向け
取り入れやすさ★★★★ 効果★★★★ 副作用の少なさ★★★
大腸を刺激してぜん動運動を促進するタイプの便秘薬がおすすめ。
有効成分として、センナ、大黄(ダイオウ)、ビサコジル、ピコスルファートナトリウムのいずれかが含まれるものを選びましょう。
その便秘、もしかしたら病気のせいかも?
なにをやっても便秘が改善されない場合、便秘の裏になんらかの病気が隠れているかもしれません。
ここでは、症状として便秘が現れる場合がある疾患をいくつか紹介します。思い当たる症状があるのであれば、早めの受診をおすすめします。
直腸がん、大腸がん がんの早期では症状はほとんどない。進行すると、血便や下血がみられる場合が多い。さらに進行すると、便秘、下痢、お腹の張り、嘔吐、慢性的な出血による貧血症状、体重減少などがみられる。
クローン病、潰瘍性大腸炎 主な症状は腹痛、下痢、血便。悪化すると、発熱、貧血、体重減少も。腸管が狭くなることで便秘がみられる場合もある。
卵巣嚢腫、子宮筋腫 卵巣嚢腫→初期はほとんど症状がない。進行すると、腹痛、腰痛、頻尿、便秘、下腹部の張り。 子宮筋腫→主な症状は月経痛と月経量の増加、過多月経。腫瘍の場所によっては便秘や腰痛、頻尿、下腹部の張りがみられる場合も。
橋本病・甲状腺機能低下症 初期や軽度の場合はほとんど症状がない。新陳代謝低下によって、むくみ、便秘、皮膚乾燥、寒がり、脱毛、月経不順、体重増加、倦怠感、抑うつ、無気力感などがみられる。
副甲状腺機能亢進症 副甲状腺の機能が亢進することによって、血中のカルシウム濃度が高くなる。(=高カルシウム血症)軽度であればほとんど症状がない。高カルシウム血症がひどくなると、倦怠感や消化器症状(食欲不振、吐き気、腹痛、便秘等)がみられる。さらに進行すると、精神症状や意識障害も。
パーキンソン病 初期症状として多いのは手足のふるえ、動作が遅くなる、歩行障害、便秘。手足のふるえはじっとしているときに起こるが、手足を動かすとふるえがなくなるのが特徴的。
うつ病 うつ病の特徴的な症状としては、抑うつ気分(憂鬱)、意欲・興味の減退がある。他にも不眠、倦怠感、頭痛、めまい、肩凝り、食欲不振、下痢、便秘など。症状は人によって精神的症状から身体的症状まで多岐にわたる。
レビー小体型認知症 初期では物忘れは目立たないが、注意力低下や見間違い、今までできていたことができないといったことが起こる場合が多い。認知機能がいいときと悪いときの変動があり初期の段階で気付くのが難しい。うつ症状、嗅覚異常、便秘、レム睡眠時の異常行動(寝ている時に叫ぶ等)は初期からみられることが多い。さらに進行すると物忘れ、パーキンソン症状(手足のふるえや歩行障害等)、幻が見える、幻聴、妄想などが目立つようになってくる。ただし症状の個人差が大きい。
糖尿病 初期症状がほとんどない。健診で血糖値が高いと指摘されたことがある人は注意。自覚症状としてのどの渇き、多尿、倦怠感、体重減少が現れる場合も。進行すると神経障害が起こり、しびれや痛み、胃腸機能の異常による下痢や便秘が生じる。
膠原病 いわゆる自己免疫疾患。本来は病原体から体を守ってくれる免疫システムが自分自身を攻撃してしまう。初期症状は風邪症状に似ている。例えば発熱(長く続く)、発疹、関節痛、筋肉痛、レイノー症状(寒さで指先が白くなる)、朝のこわばり、倦怠感が多く見られる。全身のどこに障害を受けるかによって現れる症状は異なる。腸管に障害を受けた場合は、下痢や便秘が生じる場合もある。